専門研修
成長の原動力は楽しむこと。
「楽しむ力=成長する力」を授ける授業
中学校の理科をベースに話をします
これまでも様々な企業や大学で講師として「教える」機会は多かったのですが、ワット・コンサルティングのように未経験・文系出身の人に教えるのは初めて。だから、とても新鮮です。文系の人たちといっても、空調衛生という分野が理系の分野であることをわかって飛び込んで来る人たちですから大前提として「やる気」があるわけです。そこにどう応えようかと考えましたね。
メーカーをはじめ、プロの生産技術のエンジニアに教える時は、熱力学や融体などの基礎知識は理解しているうえでスタートします。高校、大学で学んでいますからね。でも文系の人たちは高校で物理も化学もやっていない。中学校の理科まで遡るわけです。だから教える時は中学校の理科をベースに話をします。
そういう意味で新鮮なのですが、この「わからない人にわかるように説明する」という行為は実は自分自身への訓練にもなる。客先でお客様に説明する時も同じですから。「研修生の皆さんに理解してもらえなくて、どうしてお客様を理解させられようか」と自らを鼓舞しています。だから授業を通して、私自身も成長させてもらっているんです。
ものづくりは面白い。面白さに気づけば、人は自ら勉強する
オンラインの授業もありますが、リアル(対面)の授業は「理解してくれた」という反応が伝わりやすいですから嬉しいし、楽しいです。それに文系といっても、とても理解の早い人もいて驚かされます。例えに「人文科学」をあげてみても、文系ではありますが「科学」なわけです。理系で学ぶ「自然科学」とロジックという意味では同じです。論理的にものを考えるのは文系も理系も同じ、違うのは数学かどうかという点だけ。そう考えると、博士号を取るとかそういうハイレベルな話ではない限り、一生懸命やれるなら文系も理系も関係ないなと思いました。
いつも授業で伝えたいと思っていることは「ものづくりは面白い」ということです。例えばダクトひとつ取っても、そのサイズであることには必ず理由があります。そこに、ものづくりの面白さがある。ひとつの景色をみるにしても、ただ見ているのと、興味を持ってみるのでは違う。英語でいう「see」と「look・watch」の違いですね。興味を持ってみれば、必ず「発見」があります。そこから、ものづくりが始まるわけです。
2ヶ月に1回必ず行っている見学会では、天井が剥き出しになったお店に行きます。普段から皆さんが利用しているお店です。今までは「see」だったので視野に入っていても見上げたことさえなかったものが、「look・watch」に変わることで発見が生まれる。授業で教わったダクトやファンコイル、スプリンクラーが「なぜそこに、そのように、あるのか」自ら考えるわけです。つまりは「理論を一生懸命教えるよりも、ものづくりの面白さを教えた方が早い」ということです。面白さに気づけば、人は自ら勉強しますからね。
成長の原動力は楽しむこと。成長する力を授ける
いまの研修生で大阪は4期目になるのですが、理論を教えるよりも面白さを伝えることに注力するようになり、資料もかなり整理し直しました。微分方程式とか出してプロセスを教えるよりも、最後の算術式だけを教えた方が実践的で楽しめる。いかに楽しむかという点に絞った授業になって来ていますね。
ものづくりの現場で一番の喜びは完成した時の達成感やお客様の「ありがとう」という言葉です。それまで楽しさを持続させるのに必要なのは「わからなかったことがわかる」楽しさ。研修センターに入ってきた時は「何がわからないのか、わからない」状態。それを「何がわからないのかがわかる」状態まで持っていくのがこの研修の役割であり、私の役割です。
何がわからないのかがわかれば、本やネットでも調べられますし、人にも訊けます。「わからなかったことがわかる」楽しさは成長へとその人を導きます。成長の原動力は楽しむことであり、成長する力を授けることがここでの私の仕事なのです。
私もかつて現場にいた時は、いま教えている研修生たちのような若い技術者を受け入れる側の立場でした。その頃を思い出しても、現場で伸びる人というのは前向きに仕事を楽しめる人でした。一人ひとりが自ら仕事を楽しめるように、より「いかに楽しむか」という点に絞った授業にしていきたいと思っています。
実践に活かしやすい解釈。大学ではあまり学べなかった設備の知識を学べています
大学は建築学科。高校生の頃からモデルルームや住宅の間取図をみるのが好きでした。新聞に折り込まれてくる住宅広告をみて、将来自分が住む部屋の間取りを考える。その時は特に専門的な知識があったわけではないのですが楽しかったです。同じ吹奏楽部で作曲までしてしまうほどの友人が「将来音楽にどっぷりつかれる部屋がほしい」というので二人で理想の音楽ハウスの間取りを考えたり。防音室や作曲中に休憩できるスペースから始まって、最後はちゃんと生活スペースまで考えて、ひとつのお家をつくってしまいました。
大学のゼミは光環境。照明や電気、温熱などに興味を持ちました。その流れで就活では、設備設計と照明プランナーを志望。そのどちらにするかを迷っている時にワット・コンサルティングに出会ったんです。設備については大学ではあまり学べません。教育に力を入れているワット・コンサルティングなら大学であまり学べなかった設備について学べると思い入社させていただきました。
T先生の授業はとてもわかりやすい。大学ですでに教わったことを聴く時、客観的にわかるのですが、頭にすっと入ってきます。自分が理解していたニュアンスと少し解釈が違い、頭の中でそれがまとまっていく感じなんです。言い換えれば、それは実践に活かしやすい解釈なのだと思います。大学の先生方は研究ありきなので、実践に触れることは少なく、むしろ資格取得の勉強に近くなっているのではないでしょうか。教科書に沿って学ぶといったように。
T先生は、先生ご自身が現場で経験されてきたお話も多くしてくださいます。具体的な経験談ですから、自分が現場で課題にぶつかった時に「こうすればいいのか」とイメージがしやすいです。特に「失敗談」を惜しげもなくお話ししてくださいます。不思議と「失敗談」というのは記憶に残るんです、自分を重ねるというか。それにあれほどのご経歴があるT先生でも若い時には失敗されてきたんだということは、これから現場に出る私たちに勇気を与えてくださいます。研修も毎日必死なのですが、早く現場に出て実践を積み重ねていきたいと思っています。