壁の向こうをみてみたい。
素朴な願望が未来を拓く。できる事が増える=楽しい
工事現場の、あの壁の向こうをみてみたい
大学は法学部。まったくの文系なので、もともと建築は進路の選択肢にありませんでした。「理系でなければできない仕事」と思い込んでいたんです。でも、工事現場の壁の向こうが気になる。壁越しにクレーンがみえて、「かっこいいな」って。「仕事をしたら、あの囲いの中がみえるんだろうな」って思っていました。
それで就職ナビで調べてみたら、未経験でも挑戦できる会社が何社かあったんです。最初に受かった会社は「3日間の研修後、現場に出て下さい」と言われました。「3日間の研修で大丈夫でしょうか」と質問したら「大丈夫ですよ」と。今考えると大丈夫なわけがない(笑)。
一方で同時に受けていたWATでは「2カ月の研修」と告げられ、迷わずWATに決めました。
実はそれまで私は、この仕事は職人さんといっしょに手を動かして建物をつくる仕事だと思っていたんです。しかし、そうではなく、施工管理の仕事は「人に動いてもらう仕事」「人を動かす仕事」です。そのことも、WATで教えていただきました。
最初にそれを知った時は「知識がなければ指示はできないし、相当勉強しなければ…」と焦りましたが、自社スクールでの2カ月という長い研修期間は、そのためのものなんだと納得しました。
現場での学習は「S先生のファイル」と「職人さんへの質問」
専攻は空調衛生管理。ホームページで講師のS先生が私と同じ長野県出身であることを知り、最初の授業で先生に「同郷ですね」と話したのを覚えています。S先生の授業は、用意していただいた資料についての説明と先生の経験談で進行します。研修が終わる頃には、資料は厚さ8cmのファイルで4冊分。持って帰るにも一苦労なボリューム。
「現場で困ったら、まずこのファイルを見なさい」。先生のその言葉どおり、現場に出てから、この資料の価値が一段と高まりました。研修の授業の時は、先生の経験談も実感ではわからないわけですが、現場に出ると「先生、言っていたな」と思うことが毎日のように訪れます。家に帰ってファイルを開けると、まず間違いなく、その答えはそこに書いてある。先生に感謝です。
現場での学習で大切にしていることは授業の振り返りと、もうひとつ。それは、職人さんに訊くことです。職人さんは寡黙な方も多い。特に作業中は集中していることもあり、あまり話さない。でも休憩時間なら、やさしく教えて下さいます。
まずは顔と名前を一致させること。名前で呼ぶことで親近感が高まります。それで休憩時間にタバコを吸っている時とかに訊く。タバコを吸わない方でも、お昼を職人さんがいる詰所(休憩所)で食べて訊く。
そんな積み重ねで知識が増えていきました。最初は1日10~20個ぐらい質問していましたが、今はわかることも増えたので、質問の数はだいぶん減りました。最初は工具の名前とかまで訊いていましたが、今は主に工法など、質問の内容が濃くなったように思います。
できることが増えるのは楽しい
現場に出て9カ月。ずっと、駅前の商業施設とオフィス施設の大型複合ビルの改修工事の現場にいます。改修工事なので、機械室、テナントの入れ替わり、厨房など、工事も多岐に渡ります。ひとつ例にあげるなら、温度を自動感知して風量を調整することができる設備の更新など。そんな工事をしています。
実務前に現場の感触を掴めるようにと配属初日から管轄工事の所長にご自分の担当されている他の現場に呼んでいただいたり、現在も計画書等の書類作成を先輩に教えていただいたり、現場初日から現在まで所長や先輩・職人さんに可愛がっていただいています。
もともと人好き。就職前まではアルバイトも居酒屋バイトをしていました。接客や厨房で、人と話すことを楽しんでいるうちに、自然とコミュニケーションというものを覚えていたのかもしれません。自分としては、「成長したなぁ」という実感はなく、まだまだ全てがこれから、という気持ちなのですが、強いて言うのであれば、「訊かないでもわかること」が増えたのは成長なのかもしれません。
小学校、中学校、高校、大学と、ずっと楽しかったですし、基本的に「できることが増える」ということが楽しい。だから仕事でも「訊く」ことに抵抗がないんです。余計なプライドなんて一切ない。訊いて、できることが増えれば、もっと楽しくなりますから。
今後は改修工事だけでなく、新築工事も経験していきたい。“あの壁の向こう”が何よりの出発点ですからね。