配管工の仕事が好きだった。次の仕事も「建設業界」であることだけは譲れない
前職は配管工の職人でした。高校は電気科だったんですが、ちょうど知人がその配管の会社の親方を知っていたんで、まずは早く現場に出たくて、親方を紹介していただき、配管工として仕事を始めました。もともと電気科も応用が利きそうだからというくらいの理由で選んでいたので、電気である必要もなかったんです。
親方と3人で現場に出て、8年間職人を続けました。でも腰を痛めてしまったんです。入院している間も、退院して体の様子をみている間もとても不安でした。できることなら、ずっと職人を続けていたかった。配管工の仕事が好きだったんです。毎日違う環境で仕事をする。工程によって作業が変わる。変化があって、やりがいがある。それに現場によって、いろいろな人に出会えます。
毎回違う課題に向き合い、そこで出会った人と話し合いながら課題を解決していく。機械と機械をつなぐ配管の距離も毎回違いますし、配管が天井埋設だったり、外部だったり、ケースによって条件も異なります。応用は利いても同じ場面は決してありません。それを配管以外の業者の人とやり取りしながら、ひとつの工事を進めていく。
この間、14年ぶりにいっしょに仕事をした人と、ある現場の安全大会で再会しました。私は当時18歳。まだ配管工の仕事を始めたばっかりで、イチからいろいろなことを教えて下さった方です。千葉の現場で出会い、14年ぶりに佐賀の現場で再会する。そういう風に何年ぶりに再会して、仕事の後いっしょにご飯を食べに行ったりします。きつい現場を共にするほど、印象も深くなりますよね。それにまだ駆け出しだった頃に出会った人に「できるようになったね」って褒められると嬉しいです。
だから会社は違っても建設業界って、ひとつなんです。私の会社は3人の会社でしたが、教えてもらった人は自分の会社の人だけではありません。その現場その現場で出会った別の会社の人たちにも育ててもらった。建設業界に育ててもらったと言っても過言ではありません。
だから配管工を、腰を痛めて辞めざるを得なかった時も、次の仕事が「建設業界」であることだけは譲れなかったんです。それで就職ナビで検索してワット・コンサルティングに出会いました。施工管理が自分にできるか不安もありましたが、研修も充実しているし、職人の経験を活かせそうだったのでチャレンジしました。
ひとつの工程が終わっても安心はできない。「改善」の繰り返しが施工管理の仕事
CADや施工管理の基礎を研修で学び、施工管理として初めて現場に出ました。8年間の職人経験がありましたから、「自分ならどうするか」という視点で職人さんの仕事をまずみます。そうすると自分でやっていた時と違うやり方もあって、「この人はこうやるんだ」と勉強になる。そんな風に技術のことはわかるんですけど、管理となると私には経験がありません。そこで職人さんの親方に管理について教えてもらう。学び方、育ち方は職人時代と同じですね。
職人時代と大きく変わったのは、ひとつの工事が終わっても純粋に満足はできない、ホッとできないということ。配管工の時は配管の作業が終われば、そこで満足感があった。でも施工管理にとって配管の工事は数ある工程のひとつに過ぎないんです。配管の工事が終わっても、次の業種の工程がありますし、いつも全体としてみていて、「もっと早くできたのではないか」「改善の余地があったのではないか」と振り返り、反省し、次に活かします。
だから常に「改善」の繰り返しなんですよね。ひとつの工程が終わっても安心はできない。それが「管理」の仕事ということだと思います。もちろん、ひとつの工事を終えて、職人さんのホッとした顔をみると、私もいっしょに満足感は味わいます。そういう意味では職人時代と同様に、いっしょに仕事をした人と満足感を共有するし、その回数も職人時代よりも多くなりました。でも心から満足し、達成感を味わえるのはそのテナントがオープンし、問題なく稼働した時ですよね。
「問題なく稼働した時」というのも、稼働してワン・シーズン終わってみないと、わからないんです。空調なら暑い、寒い。使う方々の「誰がどこに座る」というのも、予測して調整しているに過ぎないので、そこに座る方の性別や年齢でも感じ方は変わってきますからね。もちろん、稼働後に調整が必要であれば調整に入ります。
完全な正解のない仕事。設計されたとおりに作っても体感では違うということもある。窓際と言っても、南向きの窓際や西日の入る窓際もある。この仕事は本当に完全な正解のない仕事であり、工事の段階では、あくまで仮説。だからワン・シーズン終わるまで落ちつかない。でも自分で立てたその仮説があたって、お客様に「ありがとう」と言われた時は嬉しいですよね。お客様に「ありがとう」と言われて、初めてプロの仕事です。まだまだ勉強中ですが、常に応用力をつけながら、成長していきたい。ずっと勉強していたいと思います。